相続登記を自分でする方法

法定相続人の確認

相続する不動産についての現状確認は終わりました。次は法定相続人の確認です。

実際にどう分割して相続するかに関わらず、被相続人(不動産名義人)の相続権を持っている人がどれだけいるのかを、亡くなった人も含めてすべて明らかにする必要があります。最終的にそのうちの一人だけが相続するとしても、法定相続人すべてを洗い出し、その全員の同意があることを証明することが必要です。三世代に渡る相続となると法定相続人が多くなり、この確認が最大の山場で最も時間がかかる作業となります。

法定相続人は、被相続人(不動産名義人)、その配偶者、子供、その子供と、相続に関係するすべての人の戸籍謄本を見れば確認できます。この戸籍謄本は登記申請の際にも必要となりますので取得必須な書類です。具体的な取得手順は戸籍謄本の取得をご確認ください。
必要となるのは、被相続人と法定相続人全員(すでに亡くなっている人も含めて)の戸籍謄本です。こう書くとその人数分取ればいいだけでしょと簡単に思えます。でも戸籍謄本は1人につきひとつではなく複数存在するのです。おまけに戸籍謄本はその戸籍があった自治体でしか取得できません。それが非常に手間なのですが、以下順にご説明します。

なお、戸籍謄本は戸籍全部事項証明書というのが現在の正式名称です。謄本とは原本のコピーという意味ですが、現在はコピーではなくデータベースからの出力なので呼び名が変わったそうです。とはいえ、今でも役所で戸籍謄本で通じます。

相続人が必要な戸籍謄本

まずは説明が簡単な生存している相続人から。

相続人は、被相続人との関係を証明できればOKです。代襲相続であれば、直前の相続人との関係がわかれば大丈夫です。
今回の事例(左図)でいうと、生存している相続人EとFは父母CとD(ともに死去)とのつながりがわかればOKです。両親とのつながりはE,Fの現在の戸籍謄本に記載されていますので、本籍地で普通に戸籍謄本を請求するだけ大丈夫です。

被相続人、亡くなっている法定相続権人が必要な戸籍謄本

亡くなっている法定相続権人(上図ではB,C,D)は代襲相続においては被相続人でもありますので、被相続人と必要になる戸籍謄本の種類は同じです。

被相続人は、その相続権を持つ人がどれだけいるかを証明しないといけません。それには被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を集めて、戸籍上のつながりを洗い出す必要があります。
えっ?すべての戸籍謄本って何?、普通に戸籍謄本を取れば全部書かれてるんじゃないの?と思いますよね。
例えば結婚するとそれまでの戸籍から独立して新たな戸籍が作成されますし、戸籍法が改正されると新しい書式で戸籍が書き換えられたりします。その書き換えの際に「死亡」「離婚」「転籍」などで除籍になっている人は転記が省略されます。例えば先妻との間に子がいて、離婚の際に戸籍から出て行った場合(除籍)、次の戸籍の書き換えの際に先妻とその子の記載は戸籍からなくなります。つまり今の家族は、最新の戸籍謄本を見ただけでは前の家族に気付けません。もちろん、記載がなくなるだけで法的な親子関係がなくなるわけではありません。
このように現在の戸籍謄本ではすべてのつながりはわからないので、書き換え前のものを含めた出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要となります。

上図の事例にはありませんが、祖父母に他の子(E,Fからみたおじおば)がいれば、祖父母の相続人ですのでその戸籍謄本が必要ですし、そのおじおばが亡くなっていれば代襲相続の可能性がありますので、そのおじおばの出生から死亡までの戸籍謄本が必要となります。おじおばに子がいれば、子(E,Fのいとこですね)の戸籍謄本も必要になります。

聞いたことのない相続人がいるかもしれませんし、それまで聞いていたことと本当の親戚構成が違うかもしれません。今回のケースでも、相続に関係しないと思っていた父Dに相続権がある(祖父母と養子縁組をしていた)ことが戸籍謄本によってわかりました。